2012年12月1日土曜日

暴走族の親子丼

今朝は久しぶりに親子丼。
親子丼を食べていると思い出すのは、高校時代に皿洗いのバイトしていた飲食店のこと。
そこは普通の飲食店だったが、私以外のバイトは全員暴走族という「何かがないわけがない」というドラマに満ち溢れた職場だった。




「よくそんなところで働く気になったね」と言われた。
私の通っていた学校の校則は厳しく、目立つウエイトレスなど論外。
通勤時間や勤務時間、これに目立たない職種を加えると選択肢は極限られていた。

「そんな環境でよくグレなかったね」とも言われた。
それはヤンキーのセンスにある。
当時、テクノに夢中だった若い娘にあのセンスは突っ込みどころ満載過ぎ。

彼らもまた私を仲間に引き入れようとはしなかった。
「俺らみたいなのとつるんじゃダメだよ」
「女の子はさぁ――」
彼らの語る理想の女性像はピンクでフワフワ。

ピンクやフワフワとは無縁の私にも彼らは紳士的で優しかった。
重い荷物を持とうとすると「こんなの持っちゃダメ」なんて言いながら代わってくれる。
水仕事で荒れた手を見ると「こんなになって」とハンドクリームを持ってきてくれる。
仕事への態度も極めて真面目で競うように働いていた。

「暴走族に入るような人たちって、気のいい働き者ばかりなんだなぁ」
是非とも娘の婿にしたい、ぐらいな好感度を持ちはじめた頃に事件は起きた。


それは休日のランチタイムから閉店までの「通し」の時のこと。
客足が途絶え、夜の仕込みにも間がある3時過ぎぐらいだったろうか。それぞれがお茶を飲み、おしゃべりなんかをする束の間の休憩時間。私は皿を洗い続ける前屈みの姿勢を伸ばしたくて、大抵は麦茶片手に厨房から外に出ていた。

その日もそんな休憩をとっていたところにニワトリがやってきた。トットットッ。赤いトサカに白いボディ。すぐにほかのバイトのコたちも気付き、視界は遮られた。
「どうしてこんなところに?」「まぁいいや」、確かそんなことを思い、麦茶を飲んだりしていたように思う。

どのぐらい時間が経ったのか、急に騒がしくなった方向を見ると、目に飛び込んできたのは、首のないニワトリが数歩進んでバッタリ倒れた姿だった。

ギャアアアアアア!!!
全身の毛穴がグワッと開き、髪の毛までもが逆立つ感じがしたのはあれが初めてだ。
あまりの衝撃にその後の詳細な記憶はない。

その夜のまかないは、当然のごとく親子丼。
隣で食べていた眉ナシの怖い顔が私に笑いかけた。
「肉、ちょっとかたいっスね」だって。

もちろん親子丼は完食し、もちろんバイトも3年間続けました。

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